海外の環境に自分を置くことで大きく価値観が変わるといいます。
確かに旅行で海外に行くと短期間であっても日本の良さも悪さも見えてくるものです。
外国語習得、異文化を学ぶなど、海外留学には様々な目的を持っている方がいます。
目的に応じて海外の大学へ留学、語学留学さらにはワーキングホリデーなど、海外で学ぶ方法もいくつかあります。
将来のためにも海外で留学などをしたい、しかしその資金は多くの方にとって困りごとの種になっています。
そこで本記事では、海外留学には具体的にどれくらいの費用がかかるのか、どのようにお金を用意できるかについて解説します。
海外留学にはいくらかかる?留学費用の種類と相場
留学にかかるお金には何があるのでしょうか。選択する国や留学先などによって差がありますが、必要な費用の種類は共通しています。一般的な費用をチェックしてみましょう。
- 入学金
- 授業料
- 滞在費
- 教育費
- 食費
- 航空券
- 海外生活の保険料
- 生活費
大きく分けると、「学ぶために必要なお金」と「生活するために必要なお金」の二つの費用が必要です。
どちらが欠けても海外留学の目的を果たすことができないため、あらかじめ予算を立てることが大切になります。
主な留学先別の費用の年間相場
- アメリカ 230万円~410万円
- カナダ 170万円~300万円
- イギリス 190万円~360万円
- オーストラリア 180万円~380万円
- ニュージーランド 170万円~300万円
- フィリピン 60万円~120万円
- フィジー 100万円~120万円
カナダでは法律が変わり、正規学部の学生に限ってはアルバイトができるようになりました。
しかし、一般的には留学する学生は現地でアルバイトができないのは基本です。そのため事前の資金計画は入念に考えなくてはなりません。
JASSOの留学実態調査では、留学の総費用平均額は217万円という結果が出ています。学費や生活費などをすべて含んで1ヶ月の費用の目安は15.5万円となりました。
参照元:「海外留学経験者の追跡調査」2章留学実態調査・結果の要約 (jasso.go.jp)
留学費用が安い国があれば高い国もありますし、現在は円安が進んでいるため直近の必要費用に関しては選択する国ごとに大きな差が出てきます。
留学資金の捻出方法としては、家族からのサポートや自分の貯金、そして教育ローンが考えられます。将来に大きな影響を与えるであろう留学ですが、その資金には多くの方が不安を抱えています。
学生の立場で留学する際におススメな方法と、社会人になってから留学資金を借りる方法について見ていきましょう。
国の奨学金と教育ローンは在学中の学生におすすめ
海外留学の夢を実現するための資金調達手段として、国の奨学金と教育ローンは重要な選択肢です。
これらは国内の大学進学者の約50%が利用している実績のある制度で、条件を満たせば海外留学にも活用できます。以下で、主な2つの制度について詳しく解説します。
日本学生支援機構(JASSO)の海外留学のための奨学金
JASSOが提供する海外留学支援制度は、返済不要の給付型奨学金と返済が必要な貸与型奨学金の2種類があります。
参考:独立行政法人日本学生支援機構 | JASSO
給付型奨学金は返済が不要
- 協定派遣、学部学位取得型、大学院学位取得型から選択
- 在籍大学等を通して申請を行う(学生個人が派遣プログラムの申請を行う事はできない)
給付型奨学金では、協定派遣、学部学位取得、大学院学位取得という3つの留学タイプに対応しています。支給される金額は留学先の都市によって異なり、パリやロンドンなどの物価の高い主要都市への留学では増額される仕組みとなっています。
さらに、経済状況に応じて最大16万円の渡航支援金が支給されることもあります。ただし、この給付型奨学金の申請は必ず在籍している教育機関を通じて行う必要があり、学生個人での直接申請はできません。
貸与型奨学金は返済が必要
- 通学中の高校や大学を通じて申し込みをする
- 大学や大学院で学位などの取得を目指す留学に限って利用可能(※語学留学や職業訓練系の留学では利用不可)
- 学生本人が借りる奨学金
貸与型奨学金は第一種(無利子)と第二種(有利子)があります。第一種は学業成績が特に優れており、かつ経済的な支援が必要な学生を対象としています。
第二種はより幅広い学生が利用できますが、利息が発生します。これらの奨学金は学位取得を目的とした正規留学のみが対象となり、語学留学や職業訓練目的の留学では利用できないことに注意が必要です。申込みは進学前の高校在学中、または大学在学中に行います。
日本政策金融公庫が融資する国の教育ローン
- 海外の高校、高専、短大、大学、大学院にも利用ができる
- 外国の教育施設に3ヶ月以上留学する事が条件
- 海外留学に必要となる費用を450万円を限度に借りられる(国内は上限350万円)
- 日本学生支援機構と併用が可能
- 固定金利年2.40%(令和6年5月現在)
日本政策金融公庫が提供する国の教育ローンは、3ヶ月以上の海外留学を対象として、最大450万円までの融資を受けることができます。
これは国内進学の場合の上限350万円と比べてより手厚い支援となっています。現在の金利は年2.40%(令和6年5月時点)で固定金利となっています。
このローンの大きな特徴は、申込者が保護者となることです。JASSOの奨学金が学生本人による申請であるのに対し、国の教育ローンは保護者が借り入れる形となります。
また、資金は毎月の分割ではなく、年度ごとに一括で受け取ることができます。さらに、JASSOの奨学金と併用することも可能です。
海外留学のための資金計画を立てる際は、これらの制度を上手く組み合わせることをお勧めします。特に返済が必要な貸与型奨学金や教育ローンを利用する場合は、将来の返済計画を慎重に検討することが重要です。
また、留学期間中の為替変動なども考慮に入れた余裕のある資金計画を立てることで、より安心して留学に臨むことができます。支援制度の申請は早めに準備を始めることをお勧めします。
特に給付型奨学金は競争率が高いため、早期からの情報収集と準備が成功への鍵となります。
民間の銀行や信用金庫が提供する教育ローン
国の教育ローンや奨学金は主に在学中の学生を対象にしており、各種条件をクリアする必要があります。すでに学校を卒業している社会人の方が海外留学を検討しているなら、民間の金融機関が提供している教育ローンがおすすめです。
三井住友銀行「教育ローン(無担保型)」
- 最短即日で審査結果の連絡がある
- 幅広い教育資金に対応
- 10万円以上300万円以内を10年以内に返済(※繰り上げ返済時は5500円の繰上げ返済手数料)
- 本人もしくは両親が申し込みができるため社会人でも利用ができる
- 前年度の税込み年収200万円以上
- 変動金利で3.475%(2024年6月17日現在の金利)
申込時の年齢が満20歳以上65歳以下と幅広いので、社会人としてしばらく仕事をしてから海外留学の夢ができた方も、教育ローンを利用できます。申し込み自体はWEBで24時間いつでも手続きできますが、契約時には三井住友銀行ローン契約機への来店が必要になります。
三菱UFJ銀行「ネットDE教育ローン」
- 最短即日審査回答
- 保証料込みの変動金利3.975%(金利は2024年6月17日現在)
- ネットから来店不要で申し込みが可能
- 金額確定前、支払い済みでも申し込みができる
- 前年度の税込み年収200万円以上
- 勤続年数1年以上
- 30万円~500万円の融資を10年以内に返済
三菱UFJ銀行の教育ローンは、「海外留学資金は対象外」となっています。現在海外に住んでいる方や、これから海外に住む予定の方は申込みできません。海外留学を目指して、まずは国内で語学の勉強をするための資金が必要な場合に利用できるでしょう。
教育ローン | 三菱UFJ銀行 – 三菱UFJフィナンシャル・グループ
みずほ銀行教育ローン(無担保)
- 最大金額300万円
- 変動金利3.475%(2024.6.17現在)
- 両親以外の親族が申込人になることも可能
- 仲介業者に支払う留学費用としても申し込みできる
- 勤続年数2年以上
みずほ銀行の教育ローンは教育関連資金全般が対象になっており、その中には留学資金が含まれます。多くの教育ローンは保護者もしくは本人しか申込できませんが、みずほ銀行教育ローンは理由を確認した上で親族でも申込できるという点が特徴的です。
地方銀行・信用金庫・ろうきんの教育ローン
千葉銀行
- 海外留学ローン(専用)
- 最短即日審査回答可能
- 借入までには約2週間
- 借入極度額(借入可能枠)を設定し、必要なときに追加利用できる
- 2.20%~2.60%(変動金利)(2024年6月17日現在)
- 海外大学などへの貸付実績あり
千葉銀行には豊富な種類の教育ローンがあり、その一つに「海外留学ローン」が含まれています。入学金や授業料、渡航費などの海外留学に必要な費用を一括で借りることができます。
ただし海外に居住する予定の方は利用できないため、主に親が我が子の進学を援助するための教育ローンといえます。原則として、千葉県、東京都、茨城県、埼玉県、神奈川県に居住中の方が申込対象です。
東京信用金庫
- 教育ローンを留学資金に利用可
- 金利2.13%~2.98%(固定金利)(2024年6月17日現在)
- 他ローンとの同時契約などによって金利の割引あり
- 最高1,000万円まで融資可能
東京信用金庫の営業地区に居住または勤務している方は、教育ローンを利用できます。ローンの使い道は、幼稚園から大学院等までの教育施設への入学・在学にかかる費用です。なお、海外留学費用の申し込みに関しては「来店型のみ」となっており、WEB完結型での利用はできません。
埼玉縣信用金庫
- 埼玉県・埼玉縣信用金庫提携留学ローンあり
- 埼玉県から提携留学ローン対象者確認書を交付された方が対象
- 埼玉縣信用金庫の会員である(会員となる資格がある)
- 金利1.90%(変動金利)(2024年6月17日現在)
- 最高1,000万円まで利用可能
上記の資格を満たしている、満20歳以上で安定継続した収入がある方は留学ローンを利用可能です。最長1年分の支払いに限定されていますが、低金利で借入できるというメリットがあります。申込時には合格通知書や在学証明書などの就学および資金使途を証明できる書類が必要です。
大阪シティ信用金庫
- 大阪シティ教育ローン
- 変動金利2.20%※別途保証料が必要(2024年6月18日現在)
- 10万円~1000万円まで
- 申し込み時年齢が満18歳以上の方
- 大阪シティ信用金庫の営業地域に居住または勤務している
大阪シティ信用金庫の教育ローンは、入学金や授業料だけでなく留学費用としても活用できます。就学する学校(教育施設)への納付金や就学するために必要な付帯費用を、最長1年分借りる事ができます。予備校や専門学校も対象となっているので、幅広い分野の教育に役立てることができるでしょう。
中央労働金庫
- 団体会員または生協会員のみ対象
- 金利は団体会員の構成員2.9%、生協会員の組合員および同一生計家族3.180%(2024年6月18日現在)
- 契約極度額の範囲内で反復利用
- 最高1,000万円
中央ろうきんには「証書貸付型」と「カード型」の2タイプの教育ローンがあり、カード型については留学費用に利用できます。在学期間中は極度額の範囲内で繰り返し借入を行うことができ、その間は利息のみを返済します。在学終了後に元利金の返済を行うという仕組みになっているため、在学中の負担が最小限で済みます。
近畿ろうきん
- 金利は会員組合員2.7%、生協組合員2.9%、一般勤労者3.2%(固定金利・保証料含む)(2024年6月18日現在)
- 最高1,000万円まで
- ろうきん教育ローン(カード型)も海外留学必要資金に利用可
近畿ろうきんの無担保ローン「ライフエール(教育)」は、留学のための渡航費用としても利用可能です。会員組合員の方は500万円まで、それ以外の方は300万円まで資金使途証明書類不要で申し込みができます。進路が決まっていなくても余裕を持って申し込みができ、さらに固定金利で借入できるため安心感があります。
その他の留学ローン
Orico学校提携教育ローン
- オリコ学費サポートプラン
- 最高500万円まで
- 金利は学校ごとに個別に設定
- 留学する本人または親権者が対象
- 留学期間中に手数料のみ支払い、留学後定額返済となるステップアップ返済も利用できる
- 留学生本人が帰国後に返済を引き継ぐ親子リレー返済方式もあり
- 「成功する留学」プログラムに申し込んだ方に適応
オリコの学費サポートプランとは、留学に必要な滞在費や航空券代等を都合に合わせて追加利用でき、なおかつ支払いを一本化して分割払いができる制度です。学校への進学だけでなく、語学留学やワーキングホリデー、ジュニア留学など様々な留学を成功させるためのサポート体制が整っています。返済方法の種類が多いため、経済的な事情に応じて最適な方法を選択できます。
語学留学でもローンを利用できる?
短期間の語学留学でもローンを活用することは可能です。日本政策金融公庫が提供する「国の教育ローン」では、留学期間が3ヵ月以上の場合に申込資格が得られます。
民間銀行の教育ローンは留学期間の制限を設けていないケースが多く、金利や返済条件を比較検討すると自分に合った制度が見つかります。たとえば3ヵ月や6ヵ月の短期留学であれば、必要な資金も抑えられるため、審査が通りやすい傾向にあります。
ただし、審査には個人の信用情報が大きく影響します。延滞履歴などの信用情報に問題がある場合は、ローンの利用が認められない場合があります。留学前に金融機関で事前相談を受けることをおすすめします。
留学資金で銀行ローンを選ぶ難しさ
留学資金で銀行が取り扱うローンを利用するのは、ハードルが高いと考えておきましょう。銀行の教育に関するローンは、入学許可証など明確に現地の学校へ入学することが分かる書類の提出が必要です。しかし、学校側は留学資金が十分であることを証明する預金残高証明書の提出を求めます。
こうなると、どちらも解決できず準備を進められない可能性が高くなってしまうでしょう。ローンの探し方としては、公的な貸付、次に銀行の留学ローンという順で検討していくことになります。どうしても銀行の教育ローンや留学ローンが利用できない場合は、金利の点はさておきカードローンやフリーローンなどを利用するしかありません。
ワーキングホリデーは現地でお金を稼げる
ワーキングホリデーはビザの種類のひとつで、「二国間・地域間の取決め等に基づき、各々が相手国・地域の青少年に対して、休暇目的の入国及び滞在期間中における旅行・滞在資金を補うための付随的な就労を認める」というもの。つまり、休暇を楽しむことを目的として現地で労働が許されているというものです。
あらかじめ滞在費用を貯めてから渡航するのではなく、現地で働きながら生活費をまかない、そして現地の文化に触れるという意味でも非常に有意義な制度です。
ただし、日本とワーキングホリデー制度を協定している国にしか渡航することはできません。意外にもまだアメリカやフィリピンとは協定を結んでいないためワーキングホリデーとして渡航はできません。
日本とワーホリ協定を結んでいる国は29カ国
- オーストラリア
- カナダ
- イギリス
- ニュージーランド
- フランス
- ドイツ
- アイルランド
- アイスランド
- デンマーク
- ノルウェー
- 韓国
- 香港
- 台湾
- ポーランド
- ポルトガル
- スロバキア
- オーストリア
- ハンガリー
- スペイン
- アルゼンチン
- チェコ
- チリ
- リトアニア
- スウェーデン
- エストニア
- オランダ
- イタリア
- フィンランド
- ラトビア
本格的な英語を学びたい方におすすめなのは、オーストラリア・カナダ・ニュージーランド・イギリスの4ヵ国です。
教育ローンは対象外になる
ワーキングホリデーは学業にかかわるとは限りません。そのため教育ローンでは対象外となります。渡航のための費用を考えているのであれば、銀行のフリーローンを検討するとよいでしょう。
お金ない社会人でも海外留学できる?
キャリアチェンジしたい、留学で可能性を広げたい、こんな希望を持っている社会人の方にとって、気になるのは「留学資金がない」という点ですね。貯金なし、今からお金を貯めるという状態では、腰を据えて長期留学したいならやはり「留学できない」と諦めてしまうのではないでしょうか。
しかし、お金がない、でも留学への熱意を実現できる方法として、留学ローンがあります。ワーキングホリデーなども、少ないお金ですぐに海外に行ける方法ですね。しかし、学校に長期で通って学びたいなら、やはり留学です。
社会人でも留学ローンは利用できます。貯金していても足りなそう、こんな時にも留学ローンは強い味方になってくれるでしょう。
逆に、社会人は退職していなければローンを組みやすい(=ローン審査に通りやすい)という状況をメリットとみることもできます。
借金してでも留学したほうがいいの?
当然、借金してでも留学をするのが一概に良い結果にならないこともあります。自分で何をどれだけ学びたいのか、留学の目的は何なのか、留学後の仕事へのプランはあるのか、などをまず考えてみましょう。
休職が認められる会社に勤めていないなら、退職して留学することになります。キャリアの変更はキャリアアップを目指すものですが、ダウンになるかもしれません。覚悟を決めて出発したところで、「渡航先がまったく合わなかった」というケースもあります。また、学んできた内容を、帰国後全く活かせない仕事しか見つからないこともあるでしょう。
留学への決意を後押しするには、留学計画と、資金の準備が大変重要になってきます。
海外留学の4つのメリット
留学することの大きなメリットがあります。
- 他国の言語を短期間に習得できる
- 自己効力感が向上する
- 異文化に対する理解度が向上する
- 就職の幅が広がる
グローバル化はどんどん進んでおり、英語ができることはもはや社会人の必須能力でもあります。社内公用語として英語を取り上げている企業も少なくない状態です。
TOEICのスコアが新卒採用時の足きり要因として規定に設けられている企業もあります。
- サムスン 900点
- NTTコミュニケーションズ 850点
- LG電子 800点
留学によって自分に得られるものは非常に多く、将来にも大きな影響を与えます。将来を見据えて留学することを決意したなら、教育ローンやカードローンを上手に活用しましょう。中には留学中は利息の返済のみを行い、帰国後に元利金を返済していくスタイルのローンもあるので、お金がないからといって語学留学や海外留学を諦める必要はありません。